注目の新刊『北方領土・竹島・尖閣、これが解決策』
朝日新書から注目の新刊!『北方領土・竹島・尖閣、これが解決策』
岩下明裕氏 (
北海道大学スラブ研究センター教授 ・
境界地域研究ネットワークJAPAN副代表 ) が、朝日新聞社から時宜にかなった新書を刊行されました。
ISBN:9784022735140
定価:819円(税込)
発売日:2013年7月12日
新書判並製 260ページ 新書414
紹介:
「海を自由に利用したい」という現地の声を反映した解決策を立てるべきだ──日米同盟に寄りかかるだけで外交交渉の指針を持たない日本政府に、「領有権」と「海の利用」をセットにして北方、竹島、尖閣のそれぞれについて独自の大胆な解決案を示す。
この本は、
アマゾンでも購入できます。内容の一部を立ち読みできますので、一度ご覧ください。
【著者より】
国境は泣いている
2012年は領土問題で騒々しい1年となった。書店で平積みにされた新書や文庫。領土本は売れない、という常識も破られた。だが中身は心許ない。にわか専門家が好き勝手を言い、政策も世論もふらふらする。「境界研究」の看板で仕事をしている者が黙っているわけにもいくまい。一般向け新書を、と思い立った。
難関が待ち受けていた。編集者は関心を示してくれたが、出版には二の足を踏む。どこも領土問題の「看板」執筆者を抱え、テーマの競合を気にする。領土問題に対する私のスタンスを「社風」にあわないと考える社もあった。 気持ちが後ろ向きになり始めたとき、朝日新聞オピニオン欄「境界から考える」の特集(10月6日付)で私を取材した記者の方が新書へ話をつないでくださった。当初、聞き書きでタッチ軽めの本にする予定だったが、書き下ろして濃いめの内容となった。おかげで領土問題とは何か、議論するときに欠落している視座は何かなど、掘り下げることもできた。皆さんが初めて知るような内容も盛り込んだ。ぱらぱらめくってもらえれば、新鮮な地図が目に飛び込む。「知られざる国境」の現場へとお連れしよう。
本書で言いたかったことは、歴史論議は領土問題の解決に不毛だという点だが、読者の関心はむしろ問題解決の具体策だろう。詳しくは本書に譲るが、隣国との間で国益のバランスをはかる、国境近隣に暮らす住民たちの利益を守る、緊張をもたらしかねない境界地域を平和と友好のゾーンへと変えていく。信頼醸成プロセスのなかで国境線やそれに伴う海域を大胆に組み替える。20年後の地域像を想像しながら、未来へ向かって互いに折り合う道筋を一緒につくろう。
ところで朝日といえば、前著『北方領土問題』に大佛次郎論壇賞を下さった。受賞記念の原稿が新聞に掲載された2006年12月13日は麻生太郎外相(当時)が国会で「面積折半」「三島返還」を提案したとされる日だ。この日から、私のまわりで狂想曲が始まる。論壇を賑わしたこれら騒動の顛末も本書に書き込んだ。本書は前著の続編でもある。
実は前著の刊行は2005年12月。論壇賞受賞までは1年のラグがある。騒動が大きくなったのは、朝日新聞社が賞を与えたからだともいえる。それまで、いくつかの例外を除き、この本は論壇からほぼ無視されていた。取り上げるのが「危険」だったのだろうが、時代は変わった。いまや「三島返還」を元総理でさえ、テレビで言及する。
今回、北方領土、竹島、尖閣で様々な国境線引きの可能性を追究した本書の中身は、前著を評価した朝日系列から出すことで、前著以上に「危険」と言われるかもしれない。
本当に本書は「危険」なのか? 我が国の論壇がどう反応するかが楽しみだ。前著は「国賊」と言われた。今度は「売国奴」か。本書への皆さんの評価が、そのまま日本の論壇の現実を映し出す鏡となる。
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