2009年08月03日

訴状


グリーン・クリーンふじの丘に関する住民監査請求を棄却する決定に対し,三好町長を被告とする住民訴訟を提起しました。

訴状は,本日午後,名古屋地方裁判所に訴状を提出しました。

訴状の詳細は,追記に記載。

請求の趣旨

1.被告三好町長は、平成21年4月30日にグリーン・クリーンふじの丘起債償還費(建設)三好町負担金(平成21年度前期分)として、豊田市に支払った3133万7千円のうち、金3008万5千円について、豊田市長に対し、年5分の割合の金員を付け、三好町に返還するよう請求せよ。
2.被告三好町長は、グリーン・クリーンふじの丘起債償還費(建設)三好町負担金(平成21年度後期分)3133万7千円のうち、金3008万5千円を豊田市に支払ってはならない。
3.訴訟費用は、全額被告の負担とする。
との判決を求める。

請求の原因
第1
(1)愛知県豊田市藤岡飯野町地内に一般廃棄物処分場の「グリーン・クリーンふじの丘」がある。豊田市が平成17年4月1日に西加茂郡藤岡町、同小原村、東加茂郡足助町、同下山村、同旭町、同稲武町を併合合併する以前は、三好町を含む8市町村で豊田加茂広域市町村圏事務処理組合を組織しており、合併後は豊田市と三好町が同組合を引き継ぎ、豊田三好事務組合を組織した。豊田加茂広域市町村圏事務処理組合は、従来あった勘八不燃物処分場の埋立てが進んだため、平成9年度頃から新不燃物処分場の建設を計画し、建設場所の選定や設計等を経て、平成15年7月に上記地内で工事に着手した。新不燃物処分場は、組織が豊田三好事務組合となった平成18年3月に完成し、グリーン・クリーンふじの丘と名づけられた。[甲第1号証]

(2)グリーン・クリーンふじの丘の敷地面積は約52ha、施設面積は約18haあり、埋立地、浸出水処理施設、廃棄物再生利用施設が配置されている。埋立ては3期に分けて行う予定で、現在の第1期分の埋立地は、埋立面積2万4000U+33A1、埋立容量12万5000で埋立期間15年である。事業費は国庫補助金15億6293万7千円、県補助金1億5990万1千円、起債87億7650万円、一般財源10億170万5千円の総額115億104万3千円であった。[甲第1号証]

(3)豊田三好事務組合は、諸々の議論の後、平成20年3月末に解散した。同組合は、グリーン・クリーンふじの丘以外にも、使用を中止した勘八不燃物処分場、し尿処理施設の砂川衛生プラント、火葬場の古瀬間聖苑、交流施設の藤岡ふれあいの館を、従前の組合から引き継ぐ形で所有していたが、解散時に勘八不燃物処分場と藤岡ふれあいの館を除く施設の土地と建物を、豊田市と三好町の共有名義とした。グリーン・クリーンふじの丘については、土地の持分が豊田市98/100、三好町2/100、建物の持分が豊田市853/1000、三好町147/1000である。これら施設は現在、豊田市が管理運営を行い、三好町が豊田市に委託料と負担金を支払い利用する形になっている。[甲第3号証]

(4)三好町は、新不燃物処分場の建設計画が持ち上がった当初から、グリーン・クリーンふじの丘の建設費について、建設負担金、建設費負担金、処分場負担金、起債償還費負担金等の名目で、多額の負担金を支払ってきた。その額は、運営管理費負担金を除いても、予算ベースで平成9年度546万6千円、10年度562万7千円、11年度565万6千円、12年度475万6千円、13年度1849万8千円、14年度2249万円、15年度1327万7千円、16年度1856万円、17年度2億2571万3千円、18年度2568万1千円、19年度1120万2千円、20年度3208万5千円に上る。また、21年度の負担額は、6491万円である。[甲第7号証]

(5)三好町はこのように多額の資金を負担していながら、グリーン・クリーンふじの丘へのごみ搬入量は極めて少ない。搬入実績を見ると、平成18年度豊田市搬入量1097万190kg、搬入率99.94%、三好町搬入量6050kg、搬入率0.06%、19年度豊田市搬入量957万27kg、搬入率99.40%、三好町搬入量5万7643kg、搬入率0.60%、20年度豊田市搬入量1108万3110kg、搬入率99.72%、三好町搬入量3万795kg、搬入率0.28%である。なお、20年度の搬入件数は豊田市2万571件、三好町70件であり、平成21年4月1日現在の人口は、豊田市42万2865人、三好町5万7561人である。[甲第8号証]、[甲第9号証]

(6)三好町のグリーン・クリーンふじの丘へのごみ搬入量が少ない理由は、三好町が昭和49年に日進市と東郷町と共同で尾三衛生組合を組織し、基本的に一般廃棄物の処理を尾三衛生組合の東郷美化センターで行っていることにある。平成21年度に三好町は、尾三衛生組合に対し運営費負担金2億7623万7千円、建設費負担金2億6282万8千円を支払うことになっている。また、原告等は住民監査請求を行った後で知ったことであるが、三好町と豊田市は20年4月に「清掃事務に関する覚書」を交わし、18年から32年までのグリーン・クリーンふじの丘へのごみ搬入割合を、豊田市99.53%、三好町0.47%と定めていた。[甲第7号証]、[甲第6号証]

(7)グリーン・クリーンふじの丘に係る経費は、維持管理費、土地取得費、建設事業費の3つに区分されるが、維持管理費と土地取得費の経費負担が利用実績割100%であるのに対し、建設事業費の経費負担は均等割20%、人口割40%、利用実績割40%と定めている。このため建設事業費に相当する起債償還費(建設)の負担額は、平成20年度三好町3186万1千円、豊田市1億8388万3千円、21年度三好町6267万4千円、豊田市3億5459万3千円となっている。起債償還費(建設)の増加理由は起債の元金償還が始まったためで、今後10年間にわたり続くという。[甲第8号証]、[甲第4号証]

(8)以上挙げた数値から分かるように、平成20年度の三好町と豊田市のグリーン・クリーンふじの丘の利用実績は件数で293倍、搬入量で359倍もの差があるにも係らず、21年度の起債償還費(建設)負担金の差は5.65倍に過ぎない。搬入量当たりで見ると、三好町が1kg当たり2035円を負担するのに対し、豊田市は32円に過ぎない。仮に三好町がグリーン・クリーンふじの丘を全く使用しなかったとしても、三好町の21年度の起債償還費(建設)負担金の額は、均等割4172万7千円、人口割1999万7千円の合計6172万4千円にも達する。均等割額が多い理由として、構成市町村が8であった豊田加茂広域市町村圏事務処理組合時代の均等割20%の負担方法を、構成市町が2となった豊田三好事務組合以後も引き継いだことも挙げられる。[甲第1号証]、[甲第11号証]

(9)因みにグリーン・クリーンふじの丘と同様の関係にある、砂川衛生プラントと古瀬間聖苑については三好町の利用実績もある。古瀬間聖苑の経費負担は、維持管理費が利用実績割、土地取得費と建設事業費が人口割である。砂川衛生プラントについては、土地取得費と維持管理費が利用実績割、建設事業費が均等割20%、人口割40%、利用実績割40%となっている。[甲第4号証]、[甲第5号証]

(10)地方自治体が公金を支出するに当たっては、支出額に相応する公益上の利益、効果が必要であり、それを欠く公金支出は自治体首長の裁量権を逸脱した違法行為となる。三好町の21年度のグリーン・クリーンふじの丘の起債償還費(建設)負担金の支出は、まさにそれに該当し違法行為である。

(11)豊田三好事務組合解散に伴い、その後の清掃業務の取扱いについて、平成19年12月議会に「事務委託に関する協議について」と題する議案の下、「西加茂郡三好町と豊田市との間における清掃事務の委託に関する規約」が提出されている。規約第3条には、「経費の負担、予算の執行等」について、次の定めがある。[甲第2号証]

   第3条 委託事務の管理及び執行に要する経費は、三好町の負担とする。
   2 前項の経費の額及び納付の時期は、豊田市長が三好町長と協議して定める。この場合において、豊田市長は、あらかじめ委託事務に要する経費の見積もりに関する書類を三好町長に送付しなければならない。

(12)この規約からも分かるように、グリーン・クリーンふじの丘の経費の負担方法について、三好町議会が直接係わったわけではない。三好町と豊田市は、それぞれの議会における議案の承認後、平成20年4月1日に負担金の負担方法等を定めた清掃事務に関する協定書を締結している。[甲第4号証]

第2
(1)原告の加藤芳文は三好町議会議員をしており、平成21年3月議会において、三好町が21年度にグリーン・クリーンふじの丘起債償還費負担金として、6491万円を支払うことを知った。なおこの金額は、起債償還費(建設)負担金6267万4千円と起債償還費(土地)負担金223万6千円を合算した金額である。このため議会において、施設の利用実績に合わない多額の負担金の支出は不当であり、中止すべきと発言した。[甲第7号証]、[甲第8号証]

(2)原告等は、平成21年5月12日に三好町監査委員に対し住民監査請求書を提出した。請求内容は、既述したように、グリーン・クリーンふじの丘の起債償還費(建設)の21年度三好町負担金が、利用実績に比べ過大であるとし、監査委員が町長に対し、違法・過大な負担金支払いを止めるため必要な措置を講ずるよう勧告を求めたものである。[甲第12号証]

(3)三好町監査委員は、7月6日に原告等に対し住民監査請求を棄却するとの結果を通知した。通知書から、グリーン・クリーンふじの丘の起債借入が新不燃物処分場名で5回行われ、借入金45億2390万円と利子7億270万9009円を併せた、52億2660万9009円が起債償還費(建設)の総額であることが分かった。また、監査委員の判断の要点は、「町に所有権がある以上、その建設費の起債償還は義務と考えられるので建物の起債償還費負担金とごみの搬入量は切り離して考えるべきである」、「持分所有の財産価値を考えると負担金の支払いについては、執行機関に委ねられた裁量権の範囲内の支出であり、ただちに違法までの不当な支出であるとはいえない」とする点にある。[甲第13号証]

(4)しかし、埋立地、浸出水処理施設、廃棄物再生利用施設からなる一般廃棄物処分場の価値は、所有価値にあるのではなく使用価値にある。このことは、自らがほとんど使用しないうちに、埋立地がごみで埋め立てられたとして、埋立完了後の山中の土地に価値がないことからも直ちに分かる。また、所有権に基づき三好町がグリーン・クリーンふじの丘の起債償還費(建設)を負担するならば、豊田市はただ同然で三好町の所有物を使用していることになる。その場合、豊田市は三好町に対し施設の使用料の支払い義務が生じる。いずれにしても監査委員の判断は失当である。なお、監査委員は通知書の最後で「今日の社会経済情勢等を予測すると、2期分、3期分の建設が考えられるが、ふじの丘の不燃物処理施設の建設に際しては負担割合等を協議すること、また、住民に十分な説明をし公開することも併せて要望する」と述べている。[甲第13号証]

(5)三好町は、平成21年4月30日に、21年度の起債償還費(建設)の三好町負担金の半額3133万7千円を、21年度前期分として豊田市に支払った。[甲第14号証]

結 論
第1
(1)三好町が、グリーン・クリーンふじの丘の起債償還費(建設)負担金として豊田市に支払う額は、利用実績割に基づくべきであり、均等割及び人口割に基づく負担金額の支払いは、三好町長の裁量権を逸脱した違法・過大な公金支出である。したがって、三好町が平成21年度に起債償還費(建設)負担金として豊田市に支払う額は、起債償還費(建設)の総額4億1726万7千円に19年度三好町搬入率0.60%を掛けて得られる250万4千円で十分であり、それを超える6017万円の支払いは違法・過大な公金支出である。

(2)三好町は、21年度の起債償還費(建設)の三好町負担金6267万4千円の半額を、前期負担分として既に豊田市に支払っている。そのため上記6017万円の半額3008万5千円については、三好町が豊田市に対し不当利得返還請求を起こすべきであり、残りの半額3008万5千円については、後期分としての支払いを中止すべきである。

(3)以上の考察の下、原告等は請求の趣旨に掲げる内容の提訴に至った。なお、三好町が後期分の支払いを今後行った場合には、請求の趣旨を次のように変更する。

  1.被告三好町長は、平成21年度のグリーン・クリーンふじの丘起債償還費(建設)三好町負担金(平成21年度)として豊田市に支払った6267万4千円のうち、金6017万円について、豊田市長に対し、年5分の割合の金員を付け、三好町に返還するよう請求せよ。
  2.訴訟費用は、全額被告の負担とする。
  
との判決を求める。

証拠方法
1.甲第1号証  「グリーン・クリーンふじの丘」パンフレット
2.甲第2号証  議案第75号「事務委託に関する協議について」(平成19年12月議会提出)
3.甲第3号証  議案第79号「豊田三好事務組合の解散に伴う財産処分に関する協議について」(平成19年12月議会提出)
4.甲第4号証  西加茂郡三好町と豊田市との間における清掃事務の委託に関する協定書
5.甲第5号証  西加茂郡三好町と豊田市との間における火葬事務の委託に関する協定書
6.甲第6号証  清掃事務に関する覚書
7.甲第7号証  平成9年度〜21年度の三好町予算書抜粋
8.甲第8号証  予算要求事業概要書(21年度塵芥処理に係る豊田市への事務委託等事業費)
9.甲第9号証  グリーン・クリーンふじの丘搬入状況(平成20年度)
10.甲第10号証  計算式
11.甲第11号証  中日新聞記事(平成21年5月25日)
12.甲第12号証  住民監査請求書
13.甲第13号証  住民監査請求(通知)
14.甲第14号証  支出命令書(平成21年4月30日支払い)


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